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カウンターの中からお客様と接しカツを揚げている時、職人は常日頃、何を感じ、何を思い、何を考えているのか。そのんな心の内側をお伝えします。
(左のマスの言葉をクリックして下さい。)


殺し文句

誰でも美味しいものが食べたいと思って来店するはずです。そんな時、職人に対してこんな殺し文句があります。この一言を言えば、今日の最高の食材をゲットできます。


憂鬱

職人が一番憂鬱に思う事。お客様の入り?さっきのとんかつの揚げ具合?それとも・・・・


醍醐味

毎日が試験,毎日がお客様との真剣勝負。その緊張の先にあるものは


力の配分

私達職人は何処に力を一番つぎ込むのでしょうか 

大味必淡
「たいみひったん」中国の四字述語にこんな言葉が有ります。


喜び

私達料理人の一番の喜びといえば、やはりこれしか有りません

奇を衒う
奇抜さ目新しさのみを重視する店について思う事

殺し文句

毎日、最上級の肉が入るとは限りません。(本当に気に入った肉が入るのは週にロースで2、3本です)そのためお客様に常に最高の肉を提供できるとは限りません。とは言っても、その差は殆ど微妙な差ですけれど。そこで、年配のお客様は出来るだけ柔らかい肉を(歯の弱い方が多いので硬い肉に敏感な為)若いお客様には少々目方を多めにと、お客様の顔を見てから肉を選びカットします。さー、そこでこの言葉を言われると、今日店に有る最高の肉を出さざるを得ない殺し文句があります。それはカウンターに座り「この店は美味いとんかつを食べさせてくれると紹介されて、楽しみに来たんだけど、マスター今日は何が良いかな」と言ってみてください。それを言われると「何が何でもその期待を裏切る事は出来ないぞ!」と思うためその日の一番自信の有る肉を提供する事になります。紹介してくださったお客様にもご迷惑がかから無い様にと思うため、やはりその言葉には重みがあります。どうですか貴方も、カウンターに座って殺し文句を言ってみては如何ですか。最後に食べ終わったら、本当に美味しい時は、「美味しかった!」と一言、言って頂くと嬉しいです。
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憂鬱

気持が暗くなる事はたびたび有ります。思ったよりお客様がみえなかったり、逆に忙しくて長い時間お客様に待たせてしまったり、気が付いた時には最後のお茶を出さずに帰られた時など、色々憂鬱になる事があるのです。でも一番憂鬱な気持ちにさせられるのは、気に入った肉が仕入れられない時です。自分で決めている合格ラインスレスレの肉しかなかった時が一番辛いです。慎重の上にも慎重を重ねて、出来る限りの技術で何とか上手に揚げるよう努力はしますが、それにも限度があり最上級の肉には及びません。そんな時は、そのお客様が帰る時にいつもより深く頭を下げ「ありがとうございました」と言ってしまいます。毎日が私の気に入った肉が仕入れられればこの憂鬱から開放されるのですが。
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醍醐味

「毎日毎日とんかつを揚げて飽きちゃうでしょう」言われるお客様が居ます。しかし答えは「NO!」です。肉によって揚る時間もタイミングもマチマチで常に緊張感が伴います。お客様から見ると気軽に見えがちですが、緊張が切れる事はありません。それでもなかなかピッタリのタイミング(お客様の目の前に出された時丁度余熱で火が入るタイミング)で揚げるのはやはり至難の業です。毎日が職人としての自分を試されているようで決して飽きる事は有りません。その緊張感の中で、職人としての醍醐味を感じる時が有ります。揚げたてのカツをお客様の前にお出しした時(特に複数のお客様の場合)今までおしゃべりしていた声が一瞬途切れ、お客様の目が料理に集中します。「わー美味しいそう」「綺麗な盛り付けね」と、そして再び沈黙が訪れます。今までおしゃべりしていた事が嘘の様に、黙々とカツを召し上がっているお客様がそこに居ます。そんな時に「大好きなお話さえ忘れて食べて頂いているんだなー」と、職人の醍醐味を感じるのです。
ですから決して毎日飽きることなく続けられるのだと思います。
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力の配分

お客様に冗談半分に「昼と夜の営業時間合わせても6時間半なんていいよなー」と言われる事があります。勿論その時間以外は休んで居るわけでは有りません。(できれば、そうしたいのですが)この職業は仕込みと仕入れに大きなウエイトが掛かって来ます。特に仕入れは食材その物を選ぶ大切な仕事です。テレビ番組で硬い肉をいかに美味しく出すか。とか、どんな素材もこの職人に掛かれば一流料亭の味を提供します。等などその様な類の番組をよく見ます。そんな時私はどうしても首を傾げてしまいます。硬い肉は実は硬いだけではなく味も舌触りも香りさえも全て劣ります。ですからどんなに腕のよい調理人が調理したところでそれを補いきる事は絶対に不可能です。せいぜい出来るとしたらその硬さと味、香り、舌触りをごまかすしか有りません。ですから目いっぱい、包丁で筋を切ったり、甘めの濃いソースで絡めたり、香辛料を強めに効かせたりと苦心さんたんして調理しているのが気の毒なくらい伝わってきます。お客様に「素材で料理の8割から9割が決まります」と言うと「そんな事は無いでしょう。腕も無くちゃこの味は出せないよ」と言われます。私達の仕事はできるだけ良い素材を選ぶ目を養い、その素材の良さを100%出し切る事だと思います。それが総合的に職人の腕として評価されるのだと確信しています。しかし、この答えは決してお客様を満足させるには至らない様です。ここで言う力の配分とは一番職人として力点を置く所、つまり調理の技術は言う迄も無く、素材を見分ける目とたゆまぬ食材の情報収集だと私は思います。
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大味必淡

「たいみひったん」と読みます。中国の4字述語で「美味しいと言われる物は必ず薄味である」と言う意味です。素材その物をいかす為には余計な味付けはせず、うす味で肉そのものの味を召し上がって頂く。それが美味しい味付けの基本だと思います。当店は最高の素材をうす味で召し上がって頂くそれはインパクトに欠けるかもしれませんが、いつまでも飽きの来ない、「気が付いたらもう他の店のとんかつは食べれない」と言って頂ける味が実は私の目標なのです。
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喜び

やはり料理人の一番の喜びは綺麗に残さず召し上がって頂く事です
「パセリの茎まで食べて、恥ずかしいわ」と言われる女性のお客様もいらしゃいます。しかし職人の立場からすると何も残さず召し上がって頂くのが一番の喜びです。下げてきたお皿が写真の様に綺麗ですと「アー良かった」と思うのと同時にほっとします。そして帰り際に「ご馳走様 美味しかった!」とお客様から誉めて頂けばもう完璧です

奇を衒う


店を営業する者にとって、一人でも多くのお客様に来て頂きその名を広めたいと誰もが思います。 しかし、それが店の優先順位1番となると、話は少し違ってきます。驚くほどの量を提供したり、誰もが食べた事も無い食材を常に出し続けたり、目を疑う程の低価格を打ち出したりと、奇抜さや目新しさに突起した店作りに陥りやすくなります。勿論お客様が来て戴けなければ商売は成り立ちません。しかし、そういう方法では、いずれお客様に飽きられてしまいます。帰り際に「ごちそーさま!」「あー美味しかった」「この店の定休日はいつ?」「いやー満足した」と笑顔で帰って戴く事、これこそが一番求めるものと考えています。斬新奇抜を否定するわけではありません。店作りをして行く上で、一つの要素として盛り込む事も必要でしょう。しかし、それが1番であってはいけないと思うのです。店が大切にする事は、お客様を驚かして話題性を作るのでは無く、満足して戴く事、そして又行ってみたいと思って戴く事ではないでしょうか。その為には味であり、清潔さであり、心地よい接客であると思います。しかしこれが地味でありながら最も奥の深い、実力のいる事だと考えます。「奇を衒わず」とはその様に私は考えています。勿論それは食の世界に限らず、絵画、音楽、文学、建築、書道その他諸々の世界においても一環していると思います。

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